120)20. 英語リスニングができない理由: 2007年7月アーカイブ

アリスコーポレーション社さんのご好意でマジックリスニングを1ヶ月視聴させていただきましたのでその効果についてご報告させていただきます。

<どんな内容か?>

50分ほどのCDの特殊処理された音楽を特別なイヤホンを使って12日間毎日聞くというものです。このイヤホンは高性能のものらしくためしに同じCDを他のイヤホンで聞いてみましたが処理音はほとんど聞こえませんでした。

<CDの内容>

クラシックやジャズの音楽がながれそのうち音が変化します。何か遠くの方から聞こえてくるカシャカシャといった音です。音はさまざまに変化します。いろいろな周波数の音を聞かせようとしているのでしょう。そのうち処理された音楽にかふさって英会話のダイアローグが流れます。(こちらの英会話のダイアローグは別のCDでそれだけを聞くことができます)そのうち渓流の流れとカジカの声みたいのが流れてきます。

<やったこと>

CDは最初のうちはそれだけを聞いていましたが、毎日そのためだけに時間をとるのが難しくなりそのうち他のなにかをやりながら聞くようになりました。耳はいちおうCDの音を聞いているといった状態でとにかく続けました。12日間聞きつづけるのはなかなか大変です。

<変化がおきたこと>

英語の音が硬く聞こえるようになったと思います。特に音質がいいものを聞くと子音が以前よりもひびいて聞こえます。CNNなんかを聞くと以前よりも音がきれいに聞こえるようになった気がします。 また自分で発音する時も意識して子音を響かせて発音しようとするようになったと思います。

<感想>

私はもともと英語がかなり聞き取れるので一般の日本人英語学習者の方にはあまり参考にならないかもしれませんが以下私の感想を述べます。

私は毎日ラジオ英会話入門、英会話、やさしいビジネス英語のネイティブスピーカーの話す英語を書きとっていますがマジックリスニングの使用前と使用後にはそれほど変化はなかったと思います。知らない単語はやはり聞き取れないし、英語の音の連結や脱落に慣れていないところはやはり聞き取れません。マジックリスニングを聞けば突然英語が魔法のように聞き取れるようになったということはありませんでした。

 マジックリスニングは英語教材ではありませんから、マジックリスニングで耳を英語の音に慣らした後も英語の音を聞き取ろうとする努力を続け、新しい英語の表現を正しい発音できちんと覚えていく努力をしないと英語は聞き取れるようにはならないでしょう。

しかしこのマジックリスニングという機器は英語の内容ではなく今まで無意識で無視していた周波数の音を強制的に聞かせることにより英語の音に慣れさせるという生理的な問題に焦点をあてたという意味でおもしろいと思いました。

もしかするとマジックリスニングはリスニング教材としてよりも発音矯正に役に立つかもしれません。日本人が英語の発音をすると全般的に子音が弱く張りがない英語になりがちですが、マジックリスニングで子音がはっきり聞こえるようになると自分でも子音をきれいにはっきり発音するようになると思うからです。

これは「いただいたお便りのご紹介」の「5.TOEICで500点くらいの人に私がすすめる教材」の続きです。

Q.お忙しいなか、親身になってアドバイスしていただきまして本当にありがとうございました。 稲垣様のご指摘のとおり、CNNのTAPEを聞いてもほとんど良くわかりません。テープの中で、聞き取れたフレーズや単語などから話の内容を推測しているにすぎません。英語雑誌やペーパーバックも然りです。ただ、経済記事等は仕事柄、その背景や語彙を知っているためか、リスニングよりかなりましな感じがいたします。

もし、お時間があれば、教えて頂きたいのですが、会社の先輩か(TOEIC 800 程度)から、 〝NHKラジオ教材や学習者のために意図的的に録音したものは、ひとつひとつの音が途切れているので、聞いてもあまり役に立たない。どーせ聞くなら、ネイティブが話しているニュースとかを録音しているほうが良い。〟 といわれたのですが、この点については、いかがでしょうか。

稲垣さまのお勧めいただいた〝茅ヶ崎出版・バイマンスリーやラジオ英会話入門〟は、単語と単語がつながっておらず、切れていて良くないということはないでしょうか。 
 

A.先輩が「音がつながっている」と言っているのはリダクション(音の連結・脱落)のことだと思います。 簡単な例をあげれば I want to listen to CNN. が I wanna listen to CNN になるようなことですね。

 私はリダクションを説明する時によく漢字の楷書、行書、草書と比較します。 楷書とは私達が学校で習ったり印刷で使われている漢字です。 それが少し崩れると行書になり、もっとくずれると隣の漢字と くっついてしまって楷書の原型を留めない草書になります。

英語のリスニング教材をこれに例えればだいたいこんな感じでしょうか

 1.中学校の教科書のテープや ラジオの基礎英語で使われている英語が楷書レベル

2.ニュースや英会話入門、英会話、やさしいビジネス英語、TOEICなど で使われている英語が行書レベル

3.映画で使われている英語が草書レベル にあたります。 (映画の英語は行書に近いものからスラングまじりのこれが英語かと 思われるくらい崩れてしまっているものまでいろいろあります)

漢字を学ぶ時はまず私達は楷書を習います、それからそれを自然に 崩していって行書や草書を学ぶのが普通だと思います。 楷書を学ばないうちから草書を覚えようとすると自己流の崩し方になり 変な字体になってしまいます。

英語も同じです、まず楷書である個々の 音をしっかり学びそれからリダクションを覚えていくのが正しいやり方です。 楷書や行書の英語も聞き取れないのに草書のレベルの崩れた英語から 学ぶことはおすすめできません。

ただ実際に使われている英語は楷書レベルのことはほとんどなく行書や草書レベルだというのも事実です。しかし草書レベルの英語は崩れ過ぎていて、これを初心者が学ぶと変な英語になりがちです。ですから私は教材のレベルとしては行書レベルの英語を聞いたり 話したりすることをおすすめします。

CNNと茅ヶ崎方式、英会話入門はすべて行書レベルの英語ですから違いはありません。 CNNの方が難しいのは使われている英語の語彙のレベルが高いのと ニュースの背景を知らないので理解しにくいだけのことです。(CNNでも インタビューの部分などでは草書レベルの英語のことがあります。私が 言っているのはアナウンサーやアンカーマンの話している英語です)

ですから私がすすめた教材は安心して使っていただいて結構です。 英会話入門レベルの英語でもなかなか聞き取れないものです。ためしに ラジオの放送を録音してスキットの内容や講師とアシスタントの会話を テキストを全く見ないで全文を書きとってみて下さい。最後にテキストを開けて 自分の書き取ったものとテキストを比較すると自分のリスニングの弱点 やどういうところにリダクションがおこっているかがよくわかります。

多聴も大切ですが、細かいところまで聞き取ろうとする精聴も大切です。

英語が聴き取れないのは音が聴き取れないということもありますが、音が聴き取れていてもその意味する概念がよくわからないこともあります。

この概念を理解するために大きな役割を果たしているのが背景的知識です。 背景的知識があるものはわかりやすいのです。

日本のNHKのニュースを聞くのとオーストラリアのニュースを聞くのでは、日本のニュースを聞くほうがはるかにわかりやすいです。それはニュースの背景的事情をよく知っているからです。

 映画を見る場合でも一度日本語で見ておいて、全体の内容を理解しておいてから英語を聞くと、何もしないときよりも細かいところまでずっとよく聴き取れるようになります。

聴き取ろうとする素材の背景的知識を前もって入れておいて、どんなことが話されるかある程度予想して聞くようにしておくのが効率よくリスニングの学習をするコツです。

英語は速く話されるとその文の中で弱く発音される部分が、個々の単語をひとつひとつ別々に発音した場合と違った発音で話される現象がおこります。これがリダクション(音の連結・脱落)です。

このリダクションに慣れていないと英語は聴き取れません。例えばI'm going to leave now.は実際には I'm ghh-nah leave now. と発音されます。Did she call you last night? は速く話されると Che call you last night? と聞こえます。

こうしたリダクションは英語を書きとっていく練習をしていくとだんだんそのパターンに慣れてきます。また英語を覚えるときも文字から覚えるのではなく、テープやCDをよく聞いて実際にネイティブスピーカーが話しているのと同じように言いながら覚えていくと自分が話すときにもリダクションを使えるようになります。

 LISTENING IN THE REAL WORLD(Rost & Stratton著.LINGUAL HOUSE社)はこうした Reduction の例ばかりを集めた教材です。

あたり前のことですが、知らない単語やイディオムは聞いてもわかりません。 読んでもわからないものは、聞いてわかるわけないのです。

自分の実力以上のものを聞いてもわからないのは当然です。リスニングの教材を選ぶときはそのトランスクリプションを読んですんなり意味がとれるくらいのものを選ぶべきです。トランスクリプションが辞書を引かないとわからないようなものは難しすぎます。

リスニングができるようになろうと聞く練習ばかりをやっている方がいますが、これは得策ではありません。 リスニングの力をつけるためには、英語を読んだり、語彙を増やしたりする努力も同時にしなければいけないのです。

知っている語彙が多ければ多いほど聴き取れる部分が増えますから、全体の意味も把握しやすくなります。

英語を聴き取る際に速度についていけない理由はいろいろありますが、まず絶対的に言えることは英語を日本語に訳して理解していてはダメだということです。

 日本人は長い間学校教育の中で英語を日本語に訳することばかりやってきているので、英語を聴き取るときにも日本語に訳して理解しようとします。しかし、英語を日本語に訳して理解すると、英語→概念 と英語を直接理解する場合よりも 英語→日本語→概念 と日本語に訳すという余分なプロセスをとる分だけ時間がかかります。この余分な作業をやっているうちに次の英語が耳から入ってきてしまいますから、情報が処理しきれなくなり速度についていけなくなるのです。

ですから英語は日本語に訳してはいけません。日本語に訳するクセは無駄なだけでなく情報処理能力を極端に遅くするという害悪をもたらすからです。

英語が聴き取れるようになるためには英語を聞いたらその瞬間にその意味する概念が理解できるようになっていなければなりません。そのためには単語レベル、フレーズレベル、文レベルで概念を理解できている文をたくさん頭の中にためておくことです。

概念やイメージとつながった英語が頭の中にあれば、それと同じものが耳から入ってくればその意味はすぐわかります。英語を聴き取るためにも英語のインプットは不可欠なのです。

まず「英語が聴き取れるとはどういうことか」を考えてみましょう。

私は「英語が聴き取れるということは、頭の中に記憶されている英語の音声と、耳で聞く英語の音声が一致している」ということだと思います。 逆に頭に記憶されている音声が英語の正しい発音と違っていると、正しい英語の発音を聞いてもわかりません。

 例えば「牛乳」のことを「ミルク」と覚えていると、正しい英語の発音で「ミヨコ」と聞くと何のことかわかりません。 Do you have a 「ネコ」?と聞かれても何のことかわからない人はnickel(5セント硬貨のこと)を「ニッケル」と覚えている人です。

ですからリスニングを良くしようと思ったら、まず正しい英語の発音を聞いて覚えていかなければなりません。カタカナ英語で覚えていては英語は聴き取れるようにはなれないのです。

日本人はスペリングにとらわれて英語の発音を間違って覚えている方が多いので正しい英語の発音を聞いてもそれが何を意味するのかわからない場合があるわけです。

<総論>

Q.ヒアリングが苦手なわたし。どうか、上達の秘訣・こうやってヒアリング力を磨いた、などなどアドバイスおねがいします。

.「英語が聴き取れない」と言ってもその理由には様々なものが考えられます。考えられるものとしては以下のような原因があると思います。

 1.英語を正しい音声で覚えていない。

2.速度についていけない

3.語彙不足

4.英語のリダクションに慣れていない

5.背景的知識が不足している

それぞれの原因について検討し、その克服方法を考えてみたいと思います。

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