132)32. 英会話は翻訳では正しくできない: 2007年7月アーカイブ

Hさんの意見

前回の投稿ではふれんませんでしたが、I locked myself out. と I got locked out. には微妙なニュアンスの違いがあると思います。 I locked myself out. は部屋に入れなくなったのは自分が鍵を持たないまま鍵をかけてしまった事を表し、「自分でやってしまった。」と言うところに重点がおかれるように感じられます。 それに対して、I got locked out. はただ部屋に入れなくなった事を表し、部屋に鍵をかけたのが自分かその他の人かを明らかにしない表現です。そのため、使われかたも違うように感じられます。

例えば、
A: I got locked out. B: Oh, how did it happen?
A: I locked myself out.
のような感じですか?何にせよ、文の意味をどの様にして頭にインプットするかが問題だと思います。

私の意見

ネイティブスピーカーの先生に「ホテルで鍵を部屋に忘れててきました」「あなたは何ていいますか」と状況を説明して聞きました、彼はまず"Oh, No"と言って自分が鍵を忘れて部屋を出てしまった時のことを思い出したように困った顔をして、"I locked my key in my room"と答えました。

 I locked myself out. とI got locked out.はどうかと聞いたらそれも言うと言っていました。「意味に違いはあるか」と聞くと「同じだ」と答えていました。 「ニュアンスに違いはないか,ちょっと考えてみてよ」と聞くと3つの表現を何度も口で出してみて、「ほんの小さな違いだけど」最初の2つは"I am respoinsible for it. I am stupid"というニュアンスがあるがI got locked out.は客観的な感じがするといっていました。

 「その違いを生徒に説明するか」と聞くと、「そんなことはしない、違いはごくごく小さなもので、ネイティブスピーカーでもよく考えて分析してみないとわからないものだから、そんなことまで教える必要はないし、生徒を混乱させるだけだから」と言う意見でした。

私の意見も彼と同じです。ひとつの表現もろくに使えない英語学習者にそこまで教える必要があるかというのは疑問です。この3つの表現はどれを使っても通じますし、ちゃんとスペアキーを渡してもらえます。ホテルのフロントで"I got locked out"と言ったら、"Oh, how did it happen?"と聞かれることはまずないと思います。そういう意味ではこの3つの表現は同じ機能を持っていると考えていいと思います。

文法的に解析して、ごくごくわずかしかない細かなニュアンスにこだわることも時には必要でしょうが、いつもそんなことにこだわっていると英語を自由に使えなくなります。

それよりも、私は状況を説明した時に彼が"Oh, No"と言って本当に困った顔をしたのが印象的でした。私は言語というのは知的に理解することと同時に感情的に経験的に理解することが大切だと考えています。

鍵を部屋に忘れてきた「困った」と自分の過去の経験がよみがえり、その中で "I locked myself out.という表現を覚えることの方がとるにたらないニュアンスの違いにこだわるよりもはるかに重要だと思います。

きまり文句というのは共通した特徴があると思います。ひとつは短いということです。もう一つは意味と気持ちがダイレクトに伝わってくる点です。

これも私の仮説ですが、私はネイティブスピーカーは簡潔で、言いやすくて、意味や気持ちがダイレクトに伝わる表現を無意識のうちに選択しているのではないかと思います。

日本語で考えたことを英訳して話そうとするどうしても英語が長くなってしまいます。「水をいっぱいもらえますか?」を"Will you give me a glass of water?"と言ってももちろん通じますが、ネイティブスピーカーは短くてそのものずばりの"Water, please."という表現の方を好みます。

日本語を長々と英訳しても、「なんかまどろっこしい言い方をする人だな」と思われてしまうのではないでしょうか?

この「表現の経済性」(簡潔に最もわかりやすく意味や感情を相手に伝える)という視点は今までの英語教育に欠けている点ではないかと思います。

Hさんのご意見

 はじめまして。 私も英文を覚えろと言う事に対しては基本的に賛成です。ただあまり明らかでは無いのが、その方法です。英語の数多くの表現は単純な日本語でうまく表現する事ができません。同じ物を表す名詞ですらそれらの持つイメージ、ニュアンスが日本語と異なる事もよくあります。つまり、英語を十分に知らない人が英文を覚える時その文、あるいは表現、単語が意味する物をどの様にして頭にインプットするかが問題となるように思います。

例えば、competition を形容する時に何をイメージするでしょうか?激しいのか、厳しいのか、高いのか、多いのか、熱いのか、すき間が無いのか?本当に難しいですね。

これ追加ですが、I locked myself out. とも言えますが、私がよく聞くのは、I got locked out. または、I locked my keys (in my room). ですね。ここでも、同じ動詞のlock が使われていますが二つの違った用法です。でもこれらを説明するためには長ったらしい日本語が必要です。何かいい方法はないものでしょうか?

私の意見

ご指摘ありがとうございました。 私がI locked myself out. I got lockd out. I locked my keys in my room. という3つの表現を教えるとしたら状況で教えます。

「この3つの意味は同じであり、ホテルで鍵をおいてドアを閉めてして入れなかった時にフロントでスペアキーを貸してもらう時に使う表現です。どれでもいいから一つ覚えなさい」と言って、生徒にペアを組ませ、一人に客、一人にホテルのフロント係をやらせてその受け答えを何度か練習させて終わりです。

lockの用法の使い方は説明しません。この表現を学ぶ上でそんなことは意味がないと思います。この3つの表現は全体で「鍵をおいたまま部屋のドアを閉めてしまいました」ということを表し、大切なのは「スペアーキーを貸してもらいたい」という機能であり、分解しても大した意味はないからです。

翻訳法をすすめる先生方の中にはは「会話でよく使う「きまり文句」を覚えることは応用がきかないから無駄である」という方がいらっしゃいます。しかし、私はこれはおかしいと思います。なぜならきまり文句は便利でみんながよく使うからきまり文句になっているからです。

たとえばホテルのフロントで「キーを部屋においたままドアを閉めてしまいました」と言う時、これをそのまま英訳しようとするとめんどうくさいことになります。付帯状況のwithを使って"I have closed the door with the key left in my room."と訳すこともできますが、ちょっとピンときません。

そんなことを言わなくても、普通は I locked myself out. と「きまり文句」を使えば十分です。これで100%わかってもらえます。この表現を知っていれば何も悩んで難しい付帯状況などという難しい構文を使って訳などする必要などありません。

きまり文句は知っていればいるほどとっさに使える表現が増えます。だからきまり文句はできるだけたくさん覚えましょう。

翻訳法をすすめる先生は「英文法で日本語を英語に訳していく練習をしないと知的レベルの高い複雑な構文は使えるようにならない」といいます。

しかしそんなことはないと私は思います。複雑な構文が使えるようになりたかったら複雑な構文が入った例文をたくさん覚えていけばその構文は会話の中でも使えるようになります。

 私が使っている教材では例えば「話すための英文法中級編」というのはかなり複雑な構文の文がのっています。こうした文をたくさん覚えていけば、会話の中でも複雑な構文を使えるようになっていきます。

また英字新聞の記事で使われているようなレベルの英語が使えるようになりたければ記事に中にでてくるような例文をたくさん覚えればいいのです。

私は自分のクラスでは茅ヶ崎方式のテキストの英文を覚えさせていますがコンスタントに英文を覚えてきている生徒は複雑な構文やかなり難しい語彙を会話や作文の中でどんどん使えるようになっています。

英文法を意識しないで使えるようになるために英文法の構文ごとにたくさんの例文を覚えていくことをおすすめしましたが、メンタルディクショナリーの整理整頓と方法はこれだけではありません。 たとえば状況(Situation)ごとの整理の仕方もあります。「レストランで使う表現」とか「病院で症状を伝える表現」とかいうやり方ですね。 また機能(Function)ごとに整理するやり方もあります。これは「依頼を断る表現」とか、「感謝の気持ちを使える表現」とかいうふうに整理していく方法です。 こうした整理の仕方をする場合は英語は状況のあるスキットの中で覚えたほうがいいと思います。フィニックスでそのために使っている教材はFamily Album USA と Hopes, Loves and Dreams in New Yorkとです。どちらも一つのお話になっていて状況にピッタリの表現を生き生きした感情とともに覚えていけるとても良い教材です。 整理整頓のやり方は文法ごと、状況ごと、機能ごと、といろいろありますが、どの方法をとっても共通している点は「覚えてない表現は使えない」ということです。英語ができるようになりたかったらとにかく一つでも多くの英文を意味のある形で覚える努力をしてください。

ではめくらめっぽうに英語を覚えていけばいいのかというとそうではないと思います。もちろんたくさん英語を覚えていけば英語の脳はできていくのですが、やはり時間がかかります。バラバラの知識ではなく記憶の引き出しに整理整頓するという作業をしたほうが記憶も定着するし、使う時も使いやすいでしょう。

私が脳のプロブラミングのためにおすすめするのは英文法の構文ごとに並んだ例文をたくさん覚えることです。 私は「話すための英文法」という本を使っていますが、「アメリカ口語教本」でもよいでしょう。(詳しくは私のおすすめの英語教材をご覧下さい)

文法書の英文法の説明を読んで納得することも必要だと思いますが、もっと大切なのはその例文をきちんと正しい発音で覚えることです。この作業を続けていくと脳の意識下で英文法がしだいにプログラミングされていきます。

この作業を続けながら、英語を使う機会をたくさん持っていくとそのうち意識しなくても自然にいろいろな英文法の構文を会話の中で使えるようになってきます。 私達が日本語を話す時に国文法を考えないように、英文法は意識せずに使えるようにならなければならないのです。

意識して英文法で英語を使っているうちは英語はスムーズに話せるようになりません。 そのためには正しい英語を正確に覚え(インプット)し、それを数多く使う(アウトプウト)することです。

英文法の理屈を日本語で理解することもある程度必要ですが、それ以上に大切なのは一つでも多くの英文を覚え、それを使う練習をすることです。

英語を分析して理解することで満足して、その先の理解した英語を覚えることをしないから、脳のメンタルディクショナリーの英語は増えていかず、いつまでたっても英語はできるようにならないのだと思います。

私は「英語が英語のまま聞いて理解でき、英語でそのまま自分の言いたいことを思いつけるようになるためには膨大な量の英語を覚えなければならない」と考えます。

なぜなら以前Tさんが説明してくださった「使う英語と使わない英語を瞬時に判断できる」為のメンタルディクショナリーは脳の中に純粋の本当に使われる英語を数多くインプットしていくことなしに形成できないと思うからです。

だから私は「暗記では英語は話せない」とか「どうでもよいきまり文句を覚えることは意味がない」という主張はおかしいと思うのです。「暗記などしなくても単語を文法で組み立てていけば英語は話せるようになる。苦労して英語を覚える必要などない」という考えは、もっともらしいですが邪道だと思います。

私は英語の学習は「英語を吸収すること」=「正しい英語の表現を正確な発音で覚えていくこと」が基本だと思うのです。

「翻訳をしながら英語を話しなさい」と主張する人は英語は文法が正しければ適切な表現になると思っているようですがそうでしょうか?

私は英文法で英文を作ってもそれがネイティブスピーカーが使う表現になるとは限らないと思います。前に説明した「遅れてすみません」は"I am sorry to be late" ではなく" I am sorry I am late."と言うなどということは日本語を英語に訳す練習だけしていたらわからないでしょう。

それに日本語を英語に直訳するとおうおうにして変な英語になることがよくあります。 例えば「日本人は黒い目をしています」をそのまま英語に訳して ”The Japanese have black eyes" と言ったらおかしいことになります。 black eye というのは瞳の色が黒いことではなくケンカでなぐられて目のまわりが黒くなった状態のことをしめすからです。この場合の「黒い目」はbrown eyesとしなければいけません。

 「この席、空いてますか?」を"Is this seat open?" とか"Is this seat vacant?"と直訳しても正しい英語になりません。この場合は"Is this seat taken?"という英語になります。

発想自体が違うのですね。 英語と日本は違う言語体系ですから、一語一語を訳して、文法で文を作ったって正しい英語にならないのです。

やはり適切な英語が使えるようになるためには「ネイティブスピーカーはこういう場合ではこういう表現を使う」ということを一つ一つ素直に覚えていかないといけないと思います。そうでないと「話している意味はわからないことはないんだけど、そんな英語は普通使わないな」とネイティブスピーカーに言われるような変な英語を話すことになってしまいかねません。

第1の問題は「翻訳には時間がかかる」ということです。英語を「書く」場合はある程度時間がありますから、文法のことを気にしながら文を作っていくこともできますが、「話す」というのは一瞬でやらなければいけない作業です。日本語を英語に訳すという方法で話しているのでは時間がかかってスムーズに話すことは難しいと思います。

それにこの方法をとっている人は英語を聞いた時もそれを日本語に訳して理解しようとしますから大変です。「読む」場合にはある程度時間がとれますから日本語に訳しながら理解してもなんとかやっていけますが、「聞く」場合にこれをやっていたらとても速度についていけないと思います。

やはり「聞く」「話す」に関しては英語を聞いたら英語のまま理解し、言いたいことも英語で思いつかなければスムーズなコミュニケーションはとれないと思います。

ネイティブスピーカーは言語を話す時には、文法で文を作りながら話していません。それはみなさんが日本語を話している時に国文法で文を作りながら話していないことからもすぐわかるでしょう。何を話そうかという内容は考えていますが、文法のことは考えていないと思います。「五段活用の未然形は何だっけか」なんて絶対にかんがえないでしょう?

こういうと「母国語と外国語は違う、外国語の場合は文法で文を作らなければ話せない」と反論される方がいます。でも、そうでしょうか? 少なくともこの英語を日常コミュニケーションの手段として使っている人の多くは(私も含めて)英語を話す時に文法のことを意識していません。だから言いたいことを英語で直接思いつくことは可能です。

文法のことを意識しながら話すのはやってやれないことはないですが相当難しいと思います。それにこの翻訳によって英語を話すという方法はいくつか問題があるのです。

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