04)5-4. ドラマメソッド(2):状況の大切さ
まず会話における状況の大切さについてお話します。会話には必ずSituation(またはGiven circumstances) があります。具体的にはWho?(誰が)、Where?(どこで),When?(いつ)What?(何をしようといているのか)ということですが、この設定によって話し方が全く変わってくるのです。
アクティングの基礎はまず状況を把握することから始まります。アクターがまずやらなければならないことは、脚本を読み込んで状況を正確に把握することです。状況がわからなければどう演技していいかわからないからです。
次にあげるのは奈良橋陽子先生の書かれた Pinch&Ouch というテキストに出てくるスキットです。同じ会話が状況によっていかに違った意味をもつようになるかがよくわかるので例にあげてみました。
A: Hi, How are you doing?
B: I'm doing all right.
A: What've you been up to lately?
B: Nothing much, I've been going to a lot of films.
A: Good?
B: Some good, some bad.
A: Hm
これだけではなんのおもしろみのないスキットですが、これに状況をつけます。
<状況1>
Who? Aは男子大学生、Bは女子大学生。彼らは高校時代同じサークルに属していた。
Where? 新宿の繁華街
When? 日曜の午後3時
What? AはBに好意を持っていてできればお茶にさそいたい。BもAに自分が何をしてきたか話したい。
<状況2>
Who? Aは30代の独身男性社員、Bは20代前半の女子社員 AはBが好きでいつもストーカのように追い回している。BはAが嫌いだが、上司なので困っている。
Where? 会社の社員食堂
When? 昼休み
What? Aは仕事が終わったらBと飲みにいこうとさそいたい。BはAとの会話をやめて食堂を出て生きたい。
<状況3>
Who? Aは娘に厳しい父親。BはAの娘(18歳)で父親のことを恐れている。
Where? Bの部屋
When? 夜10時
What? Aは妻からBが最近10歳以上も年上の男性とつきあっていて帰宅が遅いことを聞き、男と別れるように言いたい。BはAとの会話を避けたい。
おわかりのように,会話は同じなのにもかかわらず状況を変えただけで声の調子からbody Languageまですべてが変わってしまうのです。これがドラマメソッド(R)の醍醐味です。さらに生徒自身に状況を考えさせるともっといろいろなものがでてきます。
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