02)5-2. ドラマが言語教育に役立つ理由
英語劇制作のクラスの内容に入る前に、ドラマが語学学習に役に立つ理由について簡単に説明したいと思います。
私が学んだ演技法はアメリカではメソッド演技と呼ばれているものですが、ここではアクティングを「想像上の状況でのコミュニケーション」と考えています。つまり、俳優は想像上の状況の中でいかに相手とうまくコミュニケーションできるかの訓練を受けているのです。
語学学習者の究極の目的もコミュニケーションができるようになることですから、俳優のそれと同じです。だから語学学習にアクティングの様々なテクニックを応用することができるわけです。
ではコミュニケーションとは何なのでしょうか?簡単なモデルで説明したいと思います。ここにAさんとBさんの二人がいます。この二人がコミュニケーションすると、二人の間で何かが交換されます。何が交換されるでしょうか?
いろいろな答えが考えられると思いますが、基本的には2つの要素に分類されます。 一つは「情報」という要素です。意見のこともあるし、客観的な事実のこともありますが情報を伝えるということに関しては同じです。私達がニュースを聞いたり、講義を聞くときの目的は主としてこの情報を得る為です。
もう一つの要素は「感情」です。生徒さんに聞くと、この答えがなかなか出てこないことが多いのですが、コミュニケーションには「感情を伝える」という要素もあります。私達が映画や演劇を見にいくのは主として、感情をストーリーの中の登場人物と共感する為です。
私は今までの語学教育にはこの感情を伝えるという要素が欠落しているのではないかと思います。たとえ単語をたくさん覚え、文法的にも正しい文を作れるようになってもそこに生きた感情が入ってこないと、本当の言葉とはいえないのではないでしょうか。ドラマを語学教育に使う良いところの一つはこうした言葉の感情面を自然に学ぶことができる点だと思います。
ドラマを英語教育に応用するもう1つの良い点は、コミュニケーションの非言語要素にも、注意を払えるという点です。 例えばジェスチャー、アイコンタクト(視線の合わせ方)、顔の表情などはとても重要です。 他にも、相手との距離、身体的接触、着ているものや髪型、アクセサリーやメイクアップなどもコミュニケーションに大きな影響を与えます。 こうした非言語要素は実際にコミュニケーションする時は言語と同じか、それ以上に重要な役割を果たすのにまだまだ、語学教育の中で忘れらている分野だと思います。
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