131)31-03. 言語学による説明

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メールマガジンを読んで下さっているKさんから次のようなメールをいただきました。

はじめまして。 メルマガ、利用させてもらっています。 ところで、「なぜ言語を学ぶ環境にない人でも ネイティヴであれ間違いを指摘できるか」という問題についてわたしの意見を書いてみます。

わたしは、大学で言語学と言うのをちょこっとだけやったのですが、みょうに納得するところが多く、目からうろこと言うかんじでした。

まず、子どものころに言語を身につける際には、 習得(私のホームページでは学習という言葉を使っています)と言うよりも獲得(私のホームページでは習得という言葉を使っています)と言うことばが適しているようです。 なぜなら、子どもは言葉を覚える際に、知的労力を使っていないと考えられるからです。

これに関しては、臨界期と言うことばがあり、臨界期を終える前に 適切で一定以上の言語環境に置かれると、こどもはみるみることばをおぼえます。 これは、人間のDNAに言語獲得装置がプログラムされていて、 臨界期にある子どもは、その装置のスイッチボードを次々と設定していくだけなのです。

たとえば、英語圏で育ったこどもはSVOにスイッチオン、日本語で育つとSOVにスイッチオン。 両方使う環境にあると、2個のボードが用意される。 といったかんじです。

ちなみに臨界期は、統語に関しては、15才くらいまで、音に関しては10才くらいまでとされています。 ですから、臨界期を過ぎた後の言語学習は、「習得」(学習)となってしまい、 いくら限りなくネイティヴに近づいても、その言語の使い方が 文法的か、そうでないかをモニタリングすることはできません、 と言うか、学習によって得た知識によってでしかモニタリングしていないわけで、 本能的に間違いに気づくネイティヴとは、間違いの認識の方法は違うようです。 というのが、わたしが支持する考え方です。

チョムスキーと言う言語学者の統語論(Syntax)に関する本を読んでみると、もっと 分かりやすいと思います。

私の解説

ありがとうございます。このマガジンも一方通行ではなくいろいろな方の意見を聞かせていただけると充実します。 Kさんのおっしゃることはその通りで、私も言語学で同じことを学びました。臨界期を境に言語習得が難しくなるのは統計的にも明らかです。

しかし、「じゃあ子供はなぜ自然に言語を身につけることができるのに、大人になると難しくなるのか?」「言語を習得する仕組みはいったいどんなになっているのか」ということについては本当のところはよくわかっていません。

この仕組みを「こんなんじゃないだろうか?あんなんじゃないだろうか?」といろいろなモデルを考えていくのが言語学という学問なのですが、いくらモデルを作ってもそれが外国語の学習に役にたたないと私達英語学習者にとってはあまり意味はありません。

私がこのホームページ(メールマガジン)であつかいたいのは「じゃあどんな勉強法をとったらネイティブスピーカーに近い形で間違いが認識できるようになるのだろうか?」ということなのです。

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