115)15-02. 日本語の音韻は少ない

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Q.ジャーナリストをしていた韓国人の知り合いに聞いた話しですが、日本語や朝鮮語は英語と比べて言語として使われている音が非常に少ないのだそうです。(例:BとVやLとRの使い分け、舌をはさむTHなどが無い)。

その方の話しだと、朝鮮語も音が少ないが、日本語はさらに少なくて、英語の約半分くらいの音しかないそうです(この辺り、聞き語りですので誤りがあれば詳しい方、修正お願いします)。これにはかなり驚きました。

彼女は、母国語の音の少なさにより、英語の音を瞬間的に正しくキャッチして追いかけられないのが、両国民の英会話が苦手な理由だ、と考えているようでしたが、説得力があったので、今でも覚えています。

 

A.おっしゃる通り、日本語は「言語として使われる音」が少ない言語です。言語学ではこの「言語として使われる音」のことを音韻(phoneme)と呼んでいます。 たとえば日本人は英語のLとRの区別が苦手ですが、それは日本人はこの2つの音を同じ音韻ととらえているからです。つまり日本人の頭はこの2つの音が同じ音に聞こえるわけです。

またご指摘のように、”th”のような音はないですから、発音するのは苦労します。また日本語にない音なので、日本語にもある”s”の音で代用しがちです。

子供はまだ日本語の音韻が確立していないので、英語の音韻を聞くとそのまま素直に吸収します。子供のうちはちゃんとLとRは違った音に聞こえるのです。ところが、大人になってから英語の発音を習うと、日本語の音韻が確立してしまっているので、どうしても英語の音をそれに近い日本語の音で代用しがちなのです。

 子供の時に、正しい英語の音を聞いて英語を吸収していると、ネイティブスイーカーに近い発音になれるのに、大人の英語はなかなか日本人的な発音がとれないのはそのためです。

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コメント(1)

Eggman :

こんにちは。一応音声学・音韻論を仕事としている者です。

一般に日本語の音韻が少ないとは良く言われますが、私はこれはおかしいのではないかと思っています。いずれそれを科学的に証明しようと考えています。


まず、音韻の「数え方」というのは、言語間によって大きく異なり、さらには同じ言語でも定義の仕方によって大きく変わるからです。
英語の母音の数は、少なく見積もれば7つくらい、最大に見積もれば30くらいにもできます。

日本語の子音も同様、少なく見積もれば14くらい、多く見積もれば30を超えます。下手したら50以上にすることも可能かもしれません。

あくまで「音韻」です。「異音」ではありません。よって例えば「ん」は1つの音韻と数えます。


つまり「日本語の音韻は英語の半分くらい」と言うことができるとしたら、日本語の音韻を最大に見積もり、英語の音韻を最小に見積もって、逆に「英語の音韻は日本語の半分以下」ということもできてしまうということです。

つまり数字は全くあてにならないということです。


他にも、色々な角度からの説明ができますが、

英語学習において一番大事なことは、日本語と英語、どっちの音韻が多いかを比べることではなく、(どっちが多いかは知りませんが、少なくとも発音の難易度は日も英もだいたい同じくらいでしょう。)


「日本語は音韻の数が少ないから、外国語の学習において不利だ」という先入観を持つことが、上達の妨げになってしまいかねないのではないかということではないでしょうか?

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