116)16-04. 外から引き出す力、内から押し出す力
Q.英語を効果的に身につけるために、学習者の精神面がとても大切なことは、ご丁寧なご説明で、よく理解できました。
メンタルな面で拘束するものがあると、それが障害になり(大人サイド)、逆に「天真爛漫」だと英語のインプット・アウトプットがスムーズにいく(幼児サイド)だろうことも、卑近な例として僕があげた姪のケースの応用によっても理解できます。
ただ、そういう理解をした上でも、なお納得がいかないのは、例えば、かなりの人が、それも日本人ではなく、他の国の人たち、たとえば自尊心の強いアラブの人とか、韓国や中国の人とかは、別に「天真爛漫」とはとても思えないような人たちが、成人になってから英語を非常にうまくマスターしている現実です。
知人にもそういう人がけっこういるんです。 確かに発音はうまくはないが、彼ら・彼女らが、かなり流暢に、そしてかなり正確に自身の概念を伝える英語をしゃべり・しゃべりつづけることができるというのが、僕の印象です。
例えば、金大中・韓国大統領ですが、ご存知のように、この方は長くアメリカで留学していたのですが、英語力は相当なレヴェルです。でも、外見を見てのように、またインタビューの内容をたまに雑誌で読むのですが、間違っても「天真爛漫」と言えるようなタイプの御仁ではありません。
いま僕たちがこのスレッドで話していることの応用だけで、彼の英語上達法を判断できないことは承知していますが、彼の「大人」の部分が、つまり僕らの仮説でいうと、「社会的役割」におおいに関係する「恥」とか「体面」とか「過剰意識」とかによって、あまり影響を与えていない、もっと正確に言うと、そうした「大人」の部分が、逆に、金大中氏の英語学習に大いにプラスに働いたのではないのか、という別の仮説をもってしまうのです。
これはかねがね考えていたことなんです。日本人の英語が上達しないのは、「子ども」の率直な、「おおらかな部分」に欠けていることもあるでしょうが、ひょっとしたら、阻害すると見ているその「大人」の部分が、実は、中途半端なのではないのか、その中途半端さが阻害するのであって、もし中途半端でなければ、障害にならないのではないのか、と思えるんです。
このことは、ここのディスカッションでしばしば引用されている「耳からはじめる!英会話入門」の本の中でも、述べられているのですが、もともと英語の劣等意識を持つ理由がないにも関わらず、日本人が英語に対する癒やしがたい劣等感をいだいているという事実から、示唆されるのです。
A.おっしゃる通り、とても天真欄満とは言えないような人達が英語を自分のものとして自由に使えるようになっています。
そこで私が説明したクラッシェンの理論を修正する必要がでてくると思うのです。クラッシェンの理論は、外から学習者を安心させ自由にする手助けをすることによって,言語習得を高めようとするものです。これは学習者の言語コミュニケーション能力を「外から引き出そうとする力」だと思います。
しかし、私は学習者を自由にさせ、言語習得を高めるにはもう1つ「内から押し出す力」が関係していると思うのです。 「内から押し出す力」とはインプットに関しては、外の世界と積極的にかかわって、新しい言語を吸収していこうという力を、アウトプットに関しては、外からの圧力を押し返し、限られた言語能力をせいいっぱい使って自己を主張していこうとする力を意味します。
この「内から押し出す力」が強いか、弱いかによって、英語学習者の言語習得能力や、コミュニケーション能力はかなり違ってくるのではないかと思います。 アラブ人や、韓国人、中国人などが、日本人よりも英語を使えるようになっているのもこの「内から押し出す力」が強いからでないかと思うのです。
「耳からはじめる英会話入門」の中に出てくる大工職人か畳職人風のごま塩頭のおじさんが、片言の英語でまわりの英米人やスチュワーデスとなごやかに話しているのに、後ろの席の大学生はイヤホーンを借りることもできないというのは、この「内から押し出す力」が大学生よりおじさんの方が強いからだと思います。
この本では日本人は英語を話す時「心が萎縮している」と説明していますが、すなわち日本人は「内から押し出す力」が弱まっているということだと思います。
ではなぜ日本人は英語を話す時、心が萎縮してしまうのでしょうか?「萎縮した心」を開放するためにはどうすればよいのでしょうか?
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