107)7-10. 「日本もの」は効率がいい
この点については鈴木孝夫氏が「武器としてのことば」のP188~190で説明しているので、その部分を引用させていただきます。
外国語の上達法の第一は、出来るだけ短い期間に集中して沢山の本を読み、話し、聞き、書くことである。殊に運用能力といった実践的な目標に向かう場合は、外国語に接する密度の高いことが決定的である。
自分にとって内容のよく分からない、難しい外国の思想や、見たこともない事物や現象が頻繁に出てくるような原点を、多大の時間をかけ、まるで暗号文を解読するように読むことは、一般の語学学習としては、最も能率が悪い。
新聞にしてもイギリスのタイムズ紙を苦労して少し読むより、ジャパンタイムズを毎日欠かさず読む方が遥かに英語力がつく。外国の新聞雑誌は、事柄の前後関係や、社会的文脈、彼ら独特の比喩や言及が分かっていないと、初心者には意外に読めないものである。 日本の英字新聞の良い所は、前の日に日本で起こったことが、すぐ英語になって出てくることだ。津波や火山の噴火があれば、次の日にそれが記事になる。あのことを言っているのだなという主題の見当がつく外国語は、内容が分かっている強みで、たとえ二,三の判らない単語があっても、どんどん読んでいける。辞書を引かなくても、知らない言葉のおよその意味を前後関係で察することさえ可能である。
その反対に単語が分からない、文法も自信がない、その上考えたこともない内容、見たこともない外国の事物が語られ扱われているような、本格的や外国語の文章は、言語と内容の両方の難しさが絡み合って、何が何だかわけが分からなくなるのである。
日本ものを教材に使えば、日本人にとって内容は先刻承知であるため、学習努力の殆どは言語に集中できる。どんどん読めるから沢山読む。沢山読むから出来るようになる。出来るようになれば、その段階で外国物を読んでも、今度が語学力がついているから、未知の事項や馴染みのない思想でも、それなりに理解できるようになるのである。
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