14)5-14. ドラマメソッド(10): Talk and Listen(1)

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以前「脚本のセリフでは感情がおこりにくい」のところで「脚本のセリフを使って即興劇のような本当のコミュニケーションをする」技術があると紹介しましたが、その方法を紹介します。

この方法はアメリカのプロの俳優たちが脚本の読み合わせをするときに使う方法で、ドラマメソッド(R)を開発されたリチャード・バイア先生はこの方法を Talk and Listen と呼んでいます。

日本の演劇では役者はまず自分のセリフを暗記してから、演技の練習をするのが普通です。しかしこの方法でやると、自分のセリフを特定の言い方で覚えることになり、即興劇のような本当のコミュニケーションがおこらなくなり、リアリティがでません。セリフの言い方というのは相手の話し方によって自然に変わらなければならないのです。

そこでアメリカのアクティングメソッドでは、セリフをコミュニケーションの中で覚えていくようにします。これが Talk and Listen です。

ここでは前回紹介した佐野先生のスキットを使って説明します。

まずFather役の生徒は脚本を見て、自分のセリフを区切りのいいところまで覚えます。(長い文の場合は短く区切って覚えられるところまで覚えます。)そして話す相手の目を見て、話かけます。 この場合話相手はDaughterですから娘の目をみながら、"How about this man?"と話しかけます。

Daughterは脚本を見ないでFatherの言うことを聞いて、理解します。Fatherが何を言うかということも大切ですが、どのように言うかとも言うことも大切なので、聞くときは相手の感情までよく聞くようにします。

Motherは脚本を見ないでFatherとDaughterの二人の会話を聞いて理解しようとします。

続けてFatherはHe is a young manまで覚えて、Daughterの目を見て話しかけDaughterは聞いて理解します。DaughterはFatherの言っていることが聴き取れなければ、Pardon?と聞き返します。相手の言っているセリフがわからない時は脚本を見てはいけません。あくまでも相手の話している英語を聞いて理解しなけらばならないのです。

FatherはDaughterが理解していると感じたらwho works in my office.と続けて話しかけます。

次はDaughterがFatherの目を見ながら、I don't like a manと話しかけ、相手が理解したらwho works hard.と続けます。

こうして脚本を少しづつ覚えながら、相手の目を見て話かけ、聞き手は相手の言っていることを理解してから、次の自分のセリフを言うようにします。

次のセリフの言い方は自分の前の相手のセリフを相手がどのような感情を持って言ったかに影響されます。 Talk and Listenはいわばキャッチボールのようなものです。セリフはボールです。セリフというボールに自分の感情をのせて相手に投げます。ボールにのせられた感情は相手に影響を与えます。相手はボールによってひきおこされた感情を自分のセリフというボールにのせて相手に投げ返すのです。

 ボールは必ず相手に投げなければなりません。相手の目を見て話すのはそのためです。そして相手の投げてきたボールは確実に受けとらなければなりません。うまく受けとれなければ(聞き取れなければ)Pardon?と聞き返してもう一度相手にボールを投げてもらいます。

アクティングの本質はコミュニケーションです。それぞれの役者が覚えたセリフを自分のイメージした言い方で話しているだけではそこにコミュニケーションが発生しません。

自分のセリフを言った後、他の役者のセリフを聞かず自分の次のセリフを思い出そうとする人がいますが、とんでもありません。

自分のセリフを言うことと同じくらいまたはもっと大切なことは、相手のセリフを聞くことです。相手のセリフを聞かなければ、次の自分のセリフをどう言っていいかわかりません。「全身を耳にして相手のセリフを聞き取ろうとすること」これなしには良い演技はできません。

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